9月
アベリア
木犀の 香にあけたての 障子かな 高浜虚子
キンモクセイ
枝振りの 日毎にかはる 芙蓉かな 芭蕉
反橋の 小さく見ゆる 芙蓉かな 夏目漱石
芙蓉枯れ枯 るゝもの枯れ つくしたり 富安風生+
フヨウ
朝晩には寒いが、晴れた日には ウッドデッキ に接した居間に日が射込んで、眠くなるほどの暖かさとなる。 ウッドデッキ 越しに見る庭は、あらかた葉を落とした落葉樹の枝に、それでもわずかに散り残った枯葉が風にゆれて、すこし寂しそうに晩秋の気配におおわれている。その中でユズは庭の隅から緑色の濃い葉と黄色い実をいくつものぞかせて、庭に生気を吹き込んでいるかのようだ。
枯れ色に染まった庭に実ったユズの実は、暖か味を感じさせるとともに、忘れていたユズの香りも思い出させて、急に何やら豊かな気持ちになって、冬になるのも悪くないと思う。
吸物に いさゝか匂ふ 花柚かな 正岡子規
柚の花 やむかししのばん 料理の間 芭蕉
いたつきも 久しくなりぬ 柚は黄に 夏目漱石
古家や 累々として 柚子黄なり 正岡子規
ユズ