3月
昨夜からの雪が庭を真っ白に染め上げた。いつもの街の喧噪も、雪に吸い込まれるように遠く間遠に聞こえ、冬の終わりを告げる静けさが広がる朝。雪を踏みしめながら庭へ出ると、木々は一様に白い衣をまとい、あるものは枝をしならせ、またあるものは重みに耐えかねて折れている。
それでも、ふと目を向けると、そこには春の兆しが確かにあった。雪をかぶりながらも、ヤブツバキは深い緑の葉の間から紅い花を覗かせ、紅梅の薄紅色がほのかに庭を彩る。そして、サンシュユのやや濃い目の黄色い花が、冬の寒さを乗り越えた生命力を見せつけるかのように輝いている。
一面の白い雪と、春を告げる花々の色。この対比こそが、季節の移ろいの一瞬を映し出しているのかもしれない。まだ冷たい風が頬をかすめるが、日差しはどこか柔らかく、そっと春の訪れを予感させる。
春はもうすぐそこまで来ている。
マンリュウ
