![]() アベリア 涼やかな秋風が吹く頃の朝、雨戸を開けたとき、まだ花の姿を見ていないにもかかわらず、キンモクセイの香りが風にのってくる。その濃厚な香りにつられるように思わず ウッドデッキ の上を素足で2、3歩進んでしまう。秋を知らせてくれる国民的な香りだ。そして花も盛りをすぎる頃、キンモクセイの樹下一面に橙黄色の小花が散って、金粉を散らしたような豪奢な景色になる。
![]() 晩秋の空は高く澄みわたり、陽光はいっとき強く輝きを増したが、午後も遅くなるとやがて陽射しも弱まって、葉を落としたエゴやコナラの枝の影を長く庭に映し出していた。隣家との境の混ぜ垣にも陽は当って、今まで気がつかなかったチャの花が、白絹を思わず光沢をたたえて咲いているのが見えた。白くうつむきかげんの花は、蕾の色づいてきたサザンカの華やかさとは異なり、ひっそりと咲きながらも気品を漂わせ、晩秋の庭がシンと静まり返るのを感じる。 |