土手の上のアベリアは、梅雨の終わりの頃から次々と花が咲いて、いつの間にか涼しい風が吹く季節になっていた。暑い時期には土手下の坂道を通ると、アベリアの花の香りが強く流れ、時にムッとする程の香りに身体が包まれる感じさえしていた。この間まで思うさま枝を拡げ茂っていたのが、秋めいてきたある日、半分ほどの高さに丸く刈込まれ、今は花の香りもすっかり薄らいでしまった。見上げると、今ではほとんど建物の1階の窓まで隠れていたのがわかる。それでもわずかに残った花は次々に咲き、ジェット機の形に似たイチモンジセセリが、今もまだ花に集まっては忙しげに飛び廻っているのが、夏の名残りのように思える。![]() アベリア ![]() クチナシ ![]() コクチナシ ![]() コムラサキシキブ ![]() サツキ ![]() サルスベリ ![]() サンゴジュ ![]() シモツケ ![]() センリョウ ![]() ナナカマド ![]() ハマナス ![]() ヒメシャラ ■庭の景色■ 先程までのうだるような熱気も、強い雨脚の夕立が小一時間ばかり降った後ではいくらか和らいで、心地良い夕暮れを迎えていた。たっぷりと水気を含んで青々とした芝生のはずれに、大きなフヨウの花がゆったりと咲いている。夜にはしぼんでしまう花ではあるが、まだ暮れるまでにはわずかに間があり、淡紅色の花弁を大きく開いて咲く姿には、昼の名残りが見える。少しずつ庭の木々の下には、暮れる方の色が現れはじめたが、まだ明るさの残る空にはツバメが飛び交い、庭は穏やかな美しさを見せて夜を迎えようとしていた。> ![]() フヨウ ![]() マンリュウ
![]() ムクゲ ![]() ヤマボウシ じりじりと肌を焼く太陽もようやく傾いた頃、庭にホースでたっぷりと水を撒くと、木々の間から夕風が吹き出して、濡れた葉をわずかに揺すって行った。濡れ縁に腰掛けて見廻すと、雑木が3〜4本植栽された和室の前の庭も、灯籠が水を吸って生き返ったように生気が感じられ、暮れ色を見せはじめた中に白いリョウブの花が浮き上がって見える。しっとりと湿り気を含んだ空気は、昼の暑さを忘れさせ、まだ明るさを見せる空には白い雲が浮かんでゆっくりと流れている。遠くで鳴くヒグラシの声も妙に心に浸み入るように聞こえて、夕暮れの時のなんともいえぬ気持ち良さに、時を忘れて座り続けていた。 |