ヤブツバキ  藪椿  
ツバキ科ツバキ属  
常緑小高木。
別名:
英名: Common Camellia、 Rose Camellia
中国名: 
原産地:中国、朝鮮、台湾、日本
 日本に野生する椿はヤブツバキとユキつばきの2種がある。前者は日本の九州から近畿まで、近畿から北部は少なくなり、太平洋側に多くなる。後者は福井から秋田に至る日本海側の多雪地に分布し、みごとに住み分けている。一般的にツバキといえばヤブツバをさす。
庭園樹、実は良質の油でオリーブ油と並ぶ最良で食用、灯油、薬用、化粧油として欠かせない。また木炭は蒔絵金箔細工の研磨に利用される。
貝原益軒は葉が厚いので「あつば木」で、「あ」が省略されてツバキになったといい、新井白石は葉に光沢があるので「艶葉木(つやばき)」からの転化という。また強葉木(つよばき)、光沢木(つやき)からの転化などの説もあるが、朝鮮語のツバキにあたるton-baik(ツンバキ(ク))(冬柏)が転化したものという説の方が事実と思う。
漢名の椿はセンダン科のシンジュ(チャンチン)のことで、全く別の木である。一般に椿は国字とされているが、そうではという説の方が説得力ある。
椿の園芸は江戸時代初期から盛んで、明治末期には下火になったが、欧米には長崎出島から伝わり、19世紀初頭から英国を中心にブームが起こり、現在でも椿熱はさめていない。
椿が流行し影響を与えたことに、フランスの小説家デュマ・フィスの小説「椿姫」があり、それをオペラ化したベルディのオペラ「椿姫」がある。デュマ自身の体験からの実話で真実の恋に生きようとする高級娼婦と青年貴族の悲恋の物語。彼女は月の25日を白い椿を付け、5日間を赤い椿を胸元に付けていたといわれている。「椿姫」はベルディィのオペラの中でも特にすばらしく、歌だけでなく管弦楽曲も有名で、単独での演奏も多い。グレタ・ガルボ主演によって映画化(1937)もされている。
「樹が高いほど、あお向きに落ちる比率が大きい、低い樹だと、空中で回転する間がないので、そのままにうつぶせに落ちつくのが通例である。この空中反転作用は、花形態による空気の抵抗のはたらき方、重心の位置、花の慣性能率等によって決定される。しかし、もし虻(あぶ)が花の芯にしがみついていたら、重心が移動し、反転作用を減ずる」と推論している。漱石の句で「落ちざまに 虻を伏せたる 椿かな」とある。
黒沢明監督、三船敏郎主演の「椿三十郎」は椿が重要なシーンで出てくる。有名な水に流すシーンでは、椿の花にだけ色をつけようとしたが費用がかかり過ぎであきらめた。しかし白黒の画面なのに赤いつばきが特に目立ったのが不思議だったが、最近DVDを購入したら解説本がついていて、その説明がされていた。造花の花を黒く塗ってモノクロの中での赤を強調する工夫をしたのである。
椿の絵というともやはり速水御舟の「名樹散椿」だろう。山種美術館に行けば見ることができるだろうが、私は残念ながら実物を見たことがないが、つねづね、落花が一枚一枚の花びらになっているのか不思議だった。この絵のモデルになった椿を京都の地蔵院に数年前に見に行った。
この庭にある五色椿は、枝によって白い花や、紅色の花、まだらなものなどがあり、その花びらは八重なのだが、深く裂けているので、満開を過ぎると、一枚づつばらばらに散る。これを見て「名樹散椿」にある落花びらの意味がわかった。

 早春とはいえ、まだ寒いなか、樹々の冬芽も固いまま風にふるえている頃に、庭のヤブツバキの花が咲きだしてくる。つやつやして厚い葉は昔ら生命力を象徴している。
 

 

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