ヒサカキ  
ツバキ科ヒサカキ属  常緑小高木
別名:ビシャコ、ヒシャシャギ、シャシャキ、クサカキ
中国名:野茶、
古名:ヒササギ
原産地:

雌雄異株  高さ5m〜10m、径30センチにもなるものもある。本州、四国、九州、琉球列島、および朝鮮半島南部、台湾、中国、インド、マレーなどに分布。
これは昔から日本各地で広く見られ、利用されてきたからだろう。
和名の由来はいつくかあり、サカキに比べて小形なので、小さい意味がある姫サカキからという説、実が多く付くので、実栄樹(みさかき)からの説、サカキに似ているが、そうではないので非サカキからなどがある。
サカキの少ない地方では、代用としてヒサカキの枝葉を神事仏事に使った。現代ではサカキの名でひさかきが使われるのが一般的になってきた。ヒサカキのその緑はサカキより長く保つ。それで榊と混同されがちだが、葉は「さかき」の方が大きく、また広い。ひさかきには葉に鋸歯がある、混同を防ぐためにサカキ のことをホンサカキ(本榊)ということもある。
 花は3月に葉の腋に1、2個つき白色で直径5〜6mmぐらいになる。
晩秋にあまり目立たない紫黒色に熟したヒサカキの実は、鳥たちには人気で、冬の終わりごろから、この実をついばむ。庭木の取り寄せに植えるのもいい。
私の父は子供の時、母から自転車を買ってもらったのはいいが、そのかわり、墓参り用にと「ビシヤコ」をとってこいといわれ、母の実家近くの山へ使いによく行かされたと言っていた。また果汁にミカン汁等の酸を加えて紫色のインクにしてよく遊んだという。
大阪北部に箕面市という大阪のベッドタウンで紅葉と滝の名所がある。駅の近くに、親戚の家があり、同世代のいとこがいた。子供のころ私たち三兄弟と親戚のいとこたち十名くらいで、よく遊びに行った。行けば決まって滝の見物に行くのだか、子供の足ではなかなか大変で、歩くのが退屈で苦痛であった。何かで気を紛らせようと回りを見ると、名物の猿たちが見えてくる。観察すると、しきりに木の枝をなめている。その時は子供心にサルにとってその木の枝が美味しいのかと思っていたが、先年自宅で読むサンケイ新聞で意味がわかった。植物画家の柿原申人さんがシリーズで植物のエッセイを書いておられて、毎回読んでいたら、「ヒサカキ」の時に、このニホンザルの話がでてきた。柿原さんがえらいのは、猿のうわまえをはね、ぺろりと猿真似をされたそうで、味は、ねっとりと甘かったとある。私は出来なかったばかりに、ヒサカキについては最近まで知識不足であった。
同じ仲間にハマヒサカキがある。開花時の臭いが都市ガスによく似ている。昭和54年ごろ、自宅近くや千里でガス漏れ騒ぎがあり消防車や警官がでてきて大騒ぎになつたことがつづいた。その時は原因不明であったが、後日犯人はハマヒサカキであることがわかった。
苔むした四方仏の水鉢に、取り替えたばかりの清々しい青竹から水が滴って、小さな水音が絶え間なく響く。暮れも押しつまった気ぜわしい時期にもかかわらず、部屋の中から庭を眺めていると、何を考えるでもなくいつしか時が流れていく。羽音がして鳥が姿を現わす。メジロが辺りをうかがいながら水鉢の水を飲み、小さく鳴いた。蹲踞(つくばい)周りに植えてあるヒサカキの枝に飛び移ると、またこちらを探るように見て、紫黒色の小さな実をついばむ。普段気付かない程に目立たないヒサカキの実が、彼らの御馳走であったのを、初めて知った。+






ウッドデッキ と四季の樹木(home)に戻る